【今読みたい】数字から紐解く2024年台湾市場の可能性

【今読みたい】数字から紐解く2024年台湾市場の可能性

こんにちは、台湾でウェブマーケティングの会社 applemint の代表を務めている佐藤 (@slamdunk772) です。皆さんは「台湾市場」に関してどれくらい調査をしていますか?

「台湾市場」と検索をかけると、「人口 2300万人!」「男女比大体半々!」「出生率が低い!」「EC 市場規模が毎年10% 拡大!」などのデモグラフィーが出てきます。

台湾の人口統計はもちろん大事ですが、今日のブログではもう一歩踏み込んで、「台湾」とはどういう国なのか、財務諸表(財政収支)を通してお話したいと思います。

Wikipedia やニュースサイトでは見れない「台湾」をご紹介しましょう。

※2018年12月30日更新
※2022年3月18日更新
※2023年4月27日更新
※2024年1月11日更新

台湾を会社として見たとき「台湾」という会社は儲かっているか?

会社では事業をして売上を出し、事業にかかるコストや人件費を引いて儲けを出します。では台湾はどうでしょうか?

「台湾」を会社として見た場合、売上は歳入コストは歳出に該当します。歳入が歳出より多ければ財政収支はプラスになり、歳出が歳入より多ければマイナスとなります。

台湾の財政収支

以下は台湾の財政収支です(1980〜2022年の推移)。

image 4 6 in 【今読みたい】数字から紐解く2024年台湾市場の可能性
参考:台湾の財政収支の推移

2023年に脅威のV字回復

台湾の財政収支はマイナスが続いていましたが、2023年に脅威のV字回復をしています。つまり、2023年は歳入が歳出を上回ったということです。なんなら2023年は歳入が歳出を上回った分、そのお金が国民に還元されました。

しっかり税金を徴収しながら支持率をそれなりに維持している民進党はそれなりに頑張っているということでしょう(伝え方に問題があるのでしょうね…)

日本の財政収支

ちなみに日本の財政収支はどんな状況かご存知でしょうか?以下は日本の財政収支です。

image 4 5 in 【今読みたい】数字から紐解く2024年台湾市場の可能性
参考:日本の財政収支の推移

1990年以降の財政収支は数字でひどいものです。2013年以降回復の兆しを見せていたのですが、コロナウイルスのせいか2020年以降の財政収支は酷く、日本は基本的にデフォルトで歳出が歳入をうわまっている状態です。

「台湾」という会社の全体像を把握

次に台湾の政府は具体的にどんな売上を上げていて、どんなコストがかかっているのか調べたいと思います。以下は2021年から2023年までの歳入と歳出の内訳です。

作成されたのが2023年9月22日なので、2023年後期に関しては予算案かと思います。

image 4 13 in 【今読みたい】数字から紐解く2024年台湾市場の可能性
参考:D1-07_中央政府近三年度總預算財政收支結構分析表 を元に筆者作成

この表の上にある「収入合計(A)+(B)」が歳入で、下の「支出合計(C)+(D)」が歳出にあたります。理論上は歳入と歳出は同じ数字になります。これは貸借対照表でいうと、資産と資本みたいな関係です。

注目すべきなのは、(A)の歳入部分がどうなっているかだと思います。(A)は主に税金からの台湾政府の収入を指し、(B) は国債を指します。

歳入を見てみると、2023年の税金の歳入は前年より下がっており、税金や財政からの収入は減少、その他の項目は横ばいとなっています。

次に、歳出についてですが、歳出は「台湾政府が何に予算を使おうとするか」を把握するのに便利です。

2023年の歳出(予測) を見ると、2022年に比べて大幅に増加しています。内訳を見ると、大部分を占めるのが「国防」「経済発展」「教育・文化」「社会福利」です(表のオレンジ部分)。

国防に対する歳出は過去3年間とも全体の約15%を占め、教育や文化に対する歳出は過去3年間安定して約17〜19%、社会福利も安定的に大体24-25%です。

特に注目したいのが、赤字で示した「経済発展」への支出です。2022年度は全体の 10.8%であるのに対し、2023年度は16.96%と大幅に予算が上げられています(前年比6.16%増)。

経済発展の支出には、例えば公共建設や科学技術などさまざまな分野への予算が含まれます。2024年の科学技術に対する支出額は2000億元近くなるとも言われています。公共建設が何を指すかはちょっと分かりませんが、科学技術は半導体への投資ではないかと思われます。

社会福祉の支出・少子高齢化社会の現実

歳出の約25%を占める「社会福利」ですが、この支出が今後下がることは恐らくないでしょう。台湾の出生率は2021年に世界ワースト1位を記録し、その後も改善の兆しが見えていません。

ちなみに出生数で言うと、18年は18万1601人でしたが、20年は16万5249人、21年は15万3820人、22年は13万8986人、23年は13万5571人と、やはり年々減少しています。
参考:中央通訊社 2023年人口轉為正成長 但新生兒13.5萬人再創新低

日本でも少子化は早急の課題となっていますが、僕から見ると日本の方がよっぽど少子化問題に取り組んでいると感じます。

また高齢化に関しても、台湾では 2025年に60歳以上が人口に占める割合は25%になると言われています。台湾も日本と同様に高齢化社会に突入するということです。そのため社会福利の支出は今後さらに上がることが予測されます。

ちなみに台湾の2024年の少子化対策の予算は、過去最多で1200億元近くなる見込みです。
参考:113年度總預算社福最高 少子女化對策預算創新高

そんな状態なのに台湾の医療費は異常なほど安いです。実は台湾の健保(国民健康保険)は結構破綻寸前だったりもしますので今後はここにメスを入れる必要があるでしょう。

国民健康保険については、 applemint lab のブログに書きましたので興味がある方はそちらをご覧ください。

【台湾の医療制度崩壊は近い!?】進まない台湾の国民健康保険の改革

もし国民健康保険を値上げするとなると選挙で不利になって負けてしまうので、国民健康保険は誰も手を付けられないパンドラの箱となりました。

ではどうしたらよいか? 実は台湾政府も色々考えていて、国民健康保険がカバーする範囲がとても細分化され始めています。詳しくはapplemint lab のブログをご覧ください!

防衛費はやっぱり大事!嫌でも中国は常に意識

次にいつまで経っても減らないのが「防衛費」の支出です。今後台湾が中国と融和という方向性に傾かない限り、この固定費は今後も下がることはないと考えていいと思います。

防衛費は毎年常に全体の約14〜15% を占めています。台湾の現与党は台湾中立派(独立もしないし、統一もされたくない)であり、中国もよく圧力をかけているため、直近でこの額が下がるとは思えません。

しかもつい先日の2024年総統選では、民進党の賴清德氏が勝利し、再び与党が政権を担う事になります。

ちなみにこの表にはありませんが、尖閣問題が起きた時の防衛費は全体支出の 18-20% ありました…😅

台湾ってどんなところですか?結論

台湾という国の収入の見通し

台湾の歳入が今後大きく伸びる気配は現時点ではありませんが、それでも2023年は歳入が歳出を上回ったので、安定していると言えます。それにも関わらず法人税は20%と安く、営業税も5%なので、課税の余地を残しています。

数字を見る限り、現在台湾の景気は悪くないと思うのですが、不動産価格の上昇や物価の上昇により、台湾人は中々自国の好景気を享受できていません。これは与党の課題と言えるでしょう。

その一方で日本は景気が悪くてデフレなのに消費税を上げて、さらに消費が冷え込む始末…。

台湾という国の支出の見通し

台湾の歳出は今後も増えると思います。現に2022年から2023年にかけて歳出は大きく上がっており、国防、経済発展、教育・文化、社会福利への支出も続けて増加傾向にあります。

また立法院の予算案(2023年12月19日発表)によると、2024年度の歳出は2兆8,518億元、歲入は2兆7,251億元とあり、歳入歳出ともに過去最多になるとの予測もされています。

台湾の公債の購入者は結局民間の銀行であるため、ギリシャのようにデフォルト寸前になるようなことはありませんが、少し不安です。

また現在はウクライナ情勢などの影響で物価もどんどん高騰しています。しかし給与はさほどアップしていません。

僕個人的には交通規制を厳しくして罰則からの収入を密かに期待しています!(特にタクシー会社とバイク!笑)

見つからない結論….

いかがでしたか?
台湾は良いところです。僕ももう10年ほど住んでいます。しかしながら台湾の財政が今後劇的に改善する未来は描けません。

願わくは外資の誘致と起業家の育成、スタートアップの海外進出が促進され、交通の規制が強化されて税金の収入が増えることを祈っています。

以上 applemint 代表佐藤より、台湾の財政収支から見た台湾でした!

applemintへのご相談やご連絡はこちらから!

Leo Sato 佐藤峻

関連ブログ

にお問い合わせ