【激動の台湾起業1年目を振り返って】台湾スタートアップ実録

【激動の台湾起業1年目を振り返って】台湾スタートアップ実録

こんにちは applemint代表の佐藤 (@slamdunk772) です。いろんな方の助けや支えがあり、applemint は無事1年生き残ることができました!そして2018年9月から2年目に突入しました?

この 1 年間本当に色んなことがありました。相変わらずプライベートと仕事の境界線がないようなライフスタイルですが周り曰く最近の僕は少し落ち着いたみたいです。(自分はあまり覚えていませんが去年は本当に仕事ばっかりだったようです)

今回は今後台湾で起業する人のために1年間何が起きたか時系列でお話をし、起業する上で僕の経験が是非役に立てばと思っています。
※2019年1/29更新
※2021年12/10更新

其の一:会社を始める (2017年8-9月)

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台湾でどうやって起業したかの詳細はコチラのページに3章に分けて書いてあるため、創業間もない2ヶ月間のトピックを「会社の代表者」「資本金」の2つに絞ってお話をしたいと思います?

会社の代表者

台湾で起業をするにあたって、会社の代表者を台湾人に据えた方が容易に物事が進むのは想像できると思います。僕と僕のビジネスパートナーも同じ考えで、初めは僕のビジネスパートナーの台湾人を代表者にしようと思っていました。でも最終的には僕が代表者になりました。

なぜか?僕が始めた会社なので僕が社長なのは当たり前なのですがそれよりも給与がポイントになりました。

台湾では代表者は会社で一番高い給与をもらっていないといけないようで(有限会社も株式会社も一律適用かは不明)台湾人のビジネスパートナーを代表者にした場合、外国人の僕より高い給与をもらうためには彼の給与が 48,000NT(日本円で約17万円)となります。

なぜ48,000NTか?

実は台湾では台湾の政府が「外国人は台湾で生活をしていくために 48,000NT の給与所得が必要」と決めており、外国人の給与は最低でも 48,000NT が必要とされています。正確には日本人は 48,000NTの給与がないとそもそも労働許可証が下りなかったりします。

そのため、外国人に対して労働許可を発行する場合、多くの外国人の給与は48,000NT 〜となります。

佐藤峻leo sato

2021年現在では台湾の大学を卒業した日本人であれば38,000NT (約13.5万円)ちょっとで雇えるようです

結果として創業して間もない時期に儲けがほとんどないのに毎月 100,000NT (日本円で約35-40万円)の給与はまずいと思ったので、僕が代表になりました。また、僕が起業を決断したわけで、僕が決定に対して責任を持つ形がいいと判断しました。

佐藤峻leo sato

代表者を誰にするかって意外に揉めるんですよね〜。

資本金

台湾では外国人が起業する場合資本金が必要ですが、その資本金の出どころが鍵となります。結論から言うと、外国人が台湾で起業する場合、通常は海外からの送金が必要となります。

しかし例外が一つあります。

台湾で就業経験があり、就業時に稼いだお金が起業のため出資する50万NTを上回れば海外送金をしなくても台湾国内で全てを済ませられます。(※2017年9月時)

僕は幸いにも起業以前に台湾で就業経験があり、就業していた時の合計給与が僕が出資する予定だった資本金の額を上回っていたため、台湾の確定申告の書類を見せて、「〜万元の収入を得て〜の税金を納めた」という証拠を見せたことで海外送金の必要はなくなりました。

つまり台湾で50万NT以上の所得が過去にあったと確定申告書類を用いて証明すれば外国人であっても資本金は台湾国内から調達可能ということです。
給与明細や通帳記録は証拠としてカウントしないのでご注意を!

もしもこれを読んでいる方が現在日本にいて今後台湾に来て起業したいと思った場合、まずは台湾に来て会社名義で銀行口座を開き、日本の銀行から台湾で開いた口座への送金が必要となります。

其の二:ビジネスを決める (2017年9-10月)

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登記の準備をしながら、どんなビジネスをしようか考え始めました。正直起業前のビジネスアイデアを考える時は楽しかったです。その当時は真剣に例えば「廃棄野菜問題を解決する」「日本の過疎化した田舎を助ける」など色々考えたものです。

別にこれらのアイデアが悪い訳ではありません。実際に僕は今でも本気で廃棄野菜の問題を解決したいと考えてます。

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2022年1月8日に台北のギャラリーで規格外の野菜を販売するイベントをします!4年越しに目標を達成します!

しかし出資を受けているわけでもなかった僕らにはどう考えてもこれらのミッションを達成するための具体的なアイデアがありませんでした。仮にあったとして、投資家から出資を募ったところで 「なぜこの問題を解決するのが applemint ではないとダメか?」という質問に答えられる気がしませんでした?

そこで最終的にまずは目の前に見えている自分たちが解決できる問題点を解決して、いくらか時間がかかってからでも自分たちがしたいことすることをすればいいと思いました。

では、僕らの目の前に見えてた問題は何か?

僕は起業前に台湾現地の企業に勤めていた時、日本から台湾に進出した企業の EC サイトの購入率が低い事が気になってました。

そこで僕とパートナーはウェブサイトを分析して、ウェブサイトの購入率を上げる施策をサービスとして提供してはどうか?と思い、まずは『ウェブサイト分析&改善ビジネス』を始めました。

しかしこのビジネスはなかなかうまく行きませんでした….

其の三:ビジネスのシフトと副業 (2017年10月-11月)

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自分たちの経験をもとに、台湾の ECサイトで問題なのは低い購入率(CVR)だ!と決めつけ、会う人に「ウェブサイトを改善して購入率上げます!」と言いましたが全然刺さりません。

本当にウケが悪く、このままではどうしようもないと思い自分たちが売るものを考え直しました。結論から言うと、台湾で「ウェブマーケティングのサービス」を提供する事にしました。

色々な人と話す中で、顧客が問題と感じているのは自社のウェブサイトだけでなくウェブ広告や SEO を含めた”ウェブマーケティング” という事は過去2ヶ月でわかりました。

そこでまずはサービスをわかりやすく3つに分けました。

applemint のサービス

1. ウェブサイト制作
2. 広告運用
3. SEO

また、今まで自分達のサービス名に『グロースハック』とかよくわからない言葉を使っていましたがシンプルに「台湾でウェブマーケティング」をしていると言い始めました。

これにより、少しずつウェブサイトの制作や SEO、広告運用といった案件が個別に入るようになりました。

しかし、できたばかりの企業にすぐにお金を落としてくれるような顧客は多くありません….そこで生き延びるために僕が以前からやっていた報酬単価が高い「日→英」、「英→日」の翻訳もしてました。

ある月は翻訳だけで 10万NT(日本円で約35万円)ぐらいの収入もありました。その時は3週間 1日6-7時間フルに翻訳をして本業は全て土日や終業後していたため、めちゃくちゃ疲れました…もうしたくありません(泣)?

佐藤峻leo sato

サービス名やコミュニケーションってみなさんが思うより影響力があります

其の四:顧客を探す/無理でもやる (2017年11月-12月)

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MBA のクラスや図書館ではターゲティングなんてどうにでも定義できました。仮に「これしかいない」というターゲットを定義しても何もしなければ意味がありません。

僕らのターゲティングは非常に簡単なものでした。台湾にいる日系の会社です。海外に出れば誰しも自分の国の人と自分の国の言葉でビジネスをしたいものです。

また、台湾で日系の広告代理店に対して不満を持っている日系の企業は多くいます。そこで広義のターゲットは日系の会社とし、狭義のターゲットは中小のローカライズした、現地に決定権がある日系企業にしました。大企業を避けて中小を選んだ理由は3点あります。

1. 日系の大企業はレギュレーションが多く、applemint のリソースでは恐らく対応が難しいこと

2. 大企業はそもそも予算が大きすぎて僕らでは広告費を負担できない

3.  中小企業の方が現地に決定権がある傾向があり、applemint のような創業したてで信頼のない小さい会社でも信頼を勝ち取れば仕事を委託してくれる可能性が高かったこと

以上を踏まえて、「日系」「中小」、「ローカライズ」というターゲットを意識していました。

次に大事なのは行動です?

僕らが定義したターゲットはどんな所にいるか考え、僕はまず台湾の日本人の「飲み会」に参加する事にしました。元々内向的で飲み会とか全然好きではありませんが、そんな事言ってられません。

また、この時飲み会の顔出しと並行して SEO 目的でブログを強化しました。今では「台湾デジタルマーケ」、「台湾 SEO」 、「台湾広告代理店」などで検索をすればそれなりに上位表示されます。

その後飲み会や知り合いを通じて顧客を紹介して頂き、ようやくある会社さんの Facebook 広告のお手伝いをする事になりました。そして、そのお客さんから言われたのが、「こんな動画を作ってウェブ広告をしたいのですが、出来ますか?」です。

僕らは動画広告なんて作ったことはありません…動画広告を他社に外注することもできましたが創業したての小さな会社は 1NT でも自分たちの懐に入れたいものです。

そこで、「あ、出来ますね!」と返答し、1日10時間かけて1週間ぐらいで作りました。

佐藤峻leo sato

フリーランスとしてデザインの仕事をしていたため、Adobeソフトに強かったのが功を奏しました。

動画制作はディテールや繋ぎ、一つ一つの素材の質がまだまだ未熟で日々精進中ですがこの時無理矢理受けていたことで動画制作はその後弊社のサービスの一つとなりました。ガムシャラだったから動画広告をやろうと思い、それが収入の一つになりました。

できないことをできると言ってクライアントに迷惑をかけるのは最悪ですが、できます!と言うと自分に危機感が生まれ無理矢理やった分かなり成長する気がします。

其の五:キャッシュがやばくなる (2017年12月-2018年3月)

広告代理店プライシング

ビジネスをデジタルマーケティングにしてからクライアントは少し増えました。しかし運転コストとは恐ろしいもので人件費や仕入れコスト、オフィスの家賃は容赦無くすぐに請求が来ます?

所謂黒字倒産のような運転状態になり、粗利は出ていますが人件費や仕入れコスト、オフィス家賃のキャッシュアウトが早く、この時期はキャッシュが10-20万NT(日本円約70万円) とかになりました。

仕入れコストや販管費を入れたら毎月10万NT〜(日本円35万円以上)はあったので、破滅へのカウントダウンを自虐的にしてました(苦笑) 「今のお客さんが逃げたらあと半年で僕ら死ぬかもしれないね」みたいなことをパートナーと話していました?

もしこの時融資や出資の話が来ていたら自社のシェアを少し分けて飛びついていたかもしれません。

後ほど最後の章でお話をしますが僕は自分で起業したことで投資に対するいくつかの概念を持つことができたと思っています。其の一つがタイミングです。

どんな投資/ビジネスでも安く仕入れて高く売るのは基本だと思います。もしこの時の僕らみたいに、キャッシュがやばいけど出資すれば回復する見込みがあるスタートアップがあれば投資対象先としてどうでしょうか?

僕はこういう時にこそ出資をするべきではないかと思いました。投資家は銀行と違い、本当にポテンシャルのある会社には晴れの日に傘を貸さないで雨の日に傘を貸すべきと思いました。

其の六:蘇生・顧客が来る (2018年4月-6月)

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SEO でブログを書いていた影響もあり4-5月にGoogle 検索から弊社へ問い合わせが増えました。また、キャッシュがやばくなった時期に、弊社のターゲティングぴったりの顧客が現れ、其の後何回かのヒアリングを通して受注に成功し、安定した収入を得られるようになり始めました。

この時期から初めて営業利益でそれなりのプラスが出るようになり、初めてキャッシュを貯めることができるようになりました。僕を知る人の中には起業時に顧客がいたのだろうと思いの方もいますが、実際はほぼ0です。

一応最初の1ヶ月に知り合いから応援程度に案件を受けましたが、その後消えました。知り合いが本当にクライアントになるまでのハードルが高いことを実感しました。

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お客さんって”会社”についていて、”個人”についているわけじゃないんですよ。

また、起業当初にサービスを提供していた顧客に、その後違う方を紹介していただき、本当に人に助けられました。

其の八:まとめ/起業1年目を終えた僕が思うこと

いかがでしたでしょうか?

書き忘れましたが、1年目で最も印象に残っていることを一つ挙げろと言われたら、なけなしの10万円を使って日本に契約をクローズしに行ったことです。

その当時は本当にお金がなかったので台湾の夜10時発の LCC で東京に行って、深夜1時に羽田空港に着いた後、羽田で一夜を過ごし、次の日の朝に商談へ向かい、商談を終えたその日の深夜便で台湾に帰りました。ホテルに宿泊するお金はなかったので、弾丸で日本に行きました。

羽田空港は早朝思ったよりもうるさく、2〜3時間ほどしか寝れず、夜は友人と会食した後空港までの終電を逃し、とりあえず蒲田まで行って、そこから羽田空港まで1.5時間歩きました。

空港についた頃には空港内の寝やすいベンチは全部取られていました。しかしマックスで疲れていたので、スーツ姿でリアルに床で寝ました。起きた際、通る人から「マジか!」って顔で見られたのを覚えています?

最後に起業して1年終えた僕の感想を述べてこのブログを終えます:

1. 大事なのは柔軟性

今でも思うのは起業当初のアイデアに固執しないでよかったことです。グロースハックというサービスや顧客が求めていないサービスに固執していたら潰れてました。

2. 出資はピンチの会社へ

僕が投資家であれば今から始めるというスタートアップには恐らく出資は行いません。スタートアップの多くは、最初は自分のプロダクトやサービスに自信を持っており、あまり条件面で妥協しないでしょう。それよりも始めてから少し経ってやばいけどポテンシャルがあるスタートアップがいいのではないでしょうか?

3. MBA と起業はほぼ関係ない

MBA で学んだ2年間より起業の一年の方がよっぽど成長した気がします。また、MBA で学んだ事も行動に移さなければ意味がありません。改めてビジネスはやって学ぶものだと思いました。

【2022年1月8日】台湾で恐らく日本人初の規格外の野菜販売

applemint では2022年1月8日に台北中山にある朋丁というギャラリーで規格外の野菜を販売するイベントをします。個人的に「もったいない」という日本語を台湾で流行らせたいと思っています?

当日は僕もギャラリーにいます。もしも台湾で起業に興味があって僕に会ってみたいという方はこの機会に是非お立ち寄りください!

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Leo Sato 佐藤峻

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