先日、週末に弾丸で台南に行ってきた。台湾の歴史を勉強したことがある人なら、必ず最初に勉強するのが台南だ。
台湾の世界史への登場は、台南から始まったと言っても過言ではない。
元々僕にとって台南とは、たまに旅行で行く面白い街という印象だったが、台北の歴史を勉強し直す過程で、台南が度々登場し、結果的に色々な再発見が今回の弾丸旅につながった。
ちなみに、先日台北の歴史を勉強した内容は、以下の動画にまとめてアウトプットした。
忙しい中3-4時間かけて撮影し、我ながら割といい内容にまとめたと思っているが、再生回数はいつもの如くしょぼい😅
ビジネスでもYouTube 動画でも時間をかけたから報われるわけではない👍
話を台南に戻すと、台南の歴史についてはもちろん色んな再発見があり面白かったのだが、今日はそれよりも台南滞在時に寄った某焼肉店について話をしたい。
その理由は、その焼肉屋さんが高級店を除いて、台湾では稀に見るとんでもなく良いサービスだったからだ。
じゃー彼らはなんでサービスがいいのか?今日はそのお店で分かった考察について話をしたい。
お店のサービスを因数分解

*写真は生成AI
「サービスがいい」と言っても、人によってサービスの定義は違うし、もしかしたら読者の中には、僕の意見に同意しない人もいるかもしれない。
まずは、僕がなぜサービスがいいと思ったか、きちんと要素を分解したい。
まず、入った瞬間の笑顔と挨拶が良かった。台湾だと、よくお店に入った瞬間に、「何名?💢 予約は?💢」みたいな態度を取られることは珍しくない😅
まー、アルバイトからすれば、仕事を増やしたくないから当然だろう。
このお店は、入った瞬間から歓迎されているのを感じた。次に、オーダーしてから食べ物が来るまでのスピードも早かった。
僕が行った日は、閉店までぎっしり予約で埋まっていたらしく、回転率を上げるために、通常より早くしたのかもしれない。ただ、分かっていてもできるものではない。
しかも、オーダーをした瞬間、店員さん(恐らく店長)は、日本のラーメン屋さんみたいに大きな声でオーダーを厨房に伝え、他のスタッフもそれに呼応し、ポジティブな雰囲気を作っていた。
また、お肉もすべて丁寧に焼いてくれた。忙しい焼肉屋だと、店員さんが一回お肉を焼いたら、その後しばらくは放置プレー、なんてことはよくある。
このお店のスタッフは違った。極めつけは、店員さんが肉を一切れ掴み損ねてテーブルに落としたときだ。なんと彼は、たった一切れだけのお肉を厨房から持ってきて、すぐに焼いてくれた。
高級店ならともかく、台湾の繁盛している、価格はそこそこの焼肉屋で、こんなサービスは初めてだった。
いいサービスの正体
では、彼らはなぜこんなにサービスがいいのか?
僕は給与だと思っている。理由は、お店でトイレに行った時に以下のスタッフ募集案内を見たからだ。左下の店長の給与水準を見てほしい。

なんと70,000 – 82,000NTD だ。しかも月給とは別に、業績ボーナスも6,000 -24,000NTD と書いてある(台湾の飲食店では割と一般的な制度)。
もちろんすぐに店長になれるわけではない。恐らく勤務年数は少なくとも 5年は必要だろう。
仮に新卒で入社し、5年で店長になって、その後3年ぐらいかけて安定して店長職を全うした場合、30歳前後で82,000NTDも夢ではないだろう。
近年台湾の飲食店は人手不足により、スタッフの給与が上がっているのは聞いていたが、まさか店長クラスの給与がここまで高いとは思わなかった。しかも、台北よりも物価が安い台南で、台北でも少し高いぐらいの給与水準だ。
僕は、この給与が彼らの高いモチベーションや仕事意識につながっていると思う。
読者の中には、「いやいや、お金だけじゃ人は動かんよ」と思う人もいるだろう。その気持ちはわかる。僕も台湾で中小企業を経営していて、給与や待遇面では大手に中々勝てないから、必死に仕事をする意義をスタッフに伝えているつもりだ。
けれど、今まで台湾で会社を8年経営して振り返ると、結局それなりの年数うちで働いてくれたスタッフは皆共通してそれなりにいい給与をもらっていた。
確かに、従業員側の視点に立てば、いい給与をもらってない人がどうやって高いモチベーションを保って長い年月を働くのは無理がある。
例えば新卒で年収1,000万円もらえるような仕事が日本にあれば、1000万円の仕事必死でしようとするだろうし、他行ってもこんな給与水準は難しいから、続けるだろう。
ちなみに、まだ何者でもない人が面接に来て高い給与を要求することは多々ある。そういう人はいくらあげてもキリがないから初めから採用しない。
“やりがい”は海外でマジで通用しない

*写真は生成AI
先日、うちの某顧客が、「全然人が来ない」と嘆いていた。恐る恐る給与を聞いてみると、最低時給および最低月給で、インセンティブは特になかった。
「いやー、それは採用難しいだろう」と率直に思った😅
台湾で低賃金で優秀な人を集められるのは、グローバルに有名な企業ぐらいだ(もちろん例外はあるにせよ)。
僕の政治大学時代の友人は、以前、某外資系メーカーにとんでもなく悪い待遇で働いていたが、彼女曰く、それでも履歴書とキャリアアップのために、毎月とんでもない数の応募が来てたらしい。当然彼女もそんな企業に応募した一人だ。
ちなみに、彼女はその後Appleで働いていた。
何年か前に、台湾にあるどこかの日系企業が、「日本語ができて、能力高い人募集中! 給与3〇,〇〇〇NTD」みたいな採用告知をし、その条件と能力が全然マッチせず、ちょっとした話題になったことがある(プチ炎上)。
個人的な感覚をお伝えすると、台湾にある日系企業の待遇は、台湾企業よりもやや高めで、他のヨーロッパやアメリカの外資と比べると低い、という印象がある。
日系企業は高い給与を出したくないというより、出すことへの理解が欠けているのだと思う。
これも僕の勝手な推測だが、日系企業は総じて、「人を育てる」意識が強く、初めから高い給与をオファーすることに慣れていないのだと思う。
残念ながら、社員の流動性が高い台湾(特に台北)では、「育てる」なんて言っていられないのが現実だ。
しかも時代は円安で、いよいよ日系企業も海外に進出する余裕がなくなってきている。
おまけに、これだけ円安なものだから、本当に多くの台湾人が日本を旅行し、日本の商品を買って帰るため、台湾で日本の商品が売れなくなってきている。
僕の農家の知り合いは、今年44歳にして、初めて日本へ旅行した。
今回台南に撮影のために来て、一番の収穫はこの焼肉屋のサービスと給与水準だった。経営者として、やりがい搾取にならないよう、もっともっと競争力のある給与水準にしていきたいと思った。
applemintへのご相談やご連絡はこちらから!