台湾の友人の知り合いの会社でリストラが始まった。
経営者ということもあってか、つい2週間前に友人から台湾におけるリストラについての相談を受けた。
「僕よりもAIに聞いたほうがいいのでは?」なんて思いながら話を聞くと、相談された僕のほうがむしろ学ぶ内容が多かった。
今日は、台湾企業で実際に起きたリストラの話を基に、台湾企業はどのようにリストラを行うか、リストラされる側はどういうことに注意しないといけないかを書きたい。
恐らく90%の人には無縁の話になるとは思うが(そう願っている)、実話だし非常に興味深い話なので、ぜひ読んでみてほしい。
突然やってきたリストラ話

「会社が急にリストラ始めるらしいよ!しかもうちが対象の部署なんだって!」そんな話を友人の知り合いが会社内で聞いたのは、今から3週間ぐらい前の話だった。
“友人の知り合い”って毎度書くのは長いので、ここではAさんにしよう。
Aさんは既婚者で夫婦共働き、お子さんが二人いる。年齢は40歳。ここで仕事を失うわけにはいかない。
だからリストラの話を聞いたときにAさんが真っ先に思ったのは、「そもそもこんな簡単にリストラしていいの?」ということだった。
そこでAさんは僕の友人に相談した。僕の友人は弁護士でもなんでもないけど、Aさんとは高校からの親友で、なんでも気軽に話せる間柄だった。
とはいえ、勞基法(台湾の労働に関する法律)に対する知識はないから、二人でAIを駆使して色々調べた。
その結果、AIで調べれば調べるほど企業側に落ち度がないことがわかった。これはなかなか厳しい現実だ。そこで僕の友人は、サードオピニオンとして実際に会社を経営する僕に相談した。
某台湾企業のリストラのやり方

僕が友人からAさんが勤める台湾企業のリストラの話を聞いたとき、率直に「えっ、そんな簡単にリストラしていいの?」と心の中で思った。
僕は以前からポッドキャストやYouTubeで、台湾におけるリストラは非常に難しいという話をしてきた。実際、それは本当だと思う。
僕は台湾で経営して9年目になるが、個人的に台湾の勞基法(労働基準法)は比較的労働者に優しいという印象を受ける(労働者側からするとそんなことないかもしれないが…苦笑)
一方で、僕が「台湾では解雇規制厳しいよね」という話を台湾人の友人にすると、決まって「そんなことないよ!」と返事が来ることが多い。
だから、台湾の解雇規制に関しては正直モヤモヤしたものがあったし、この機会に僕もAIを使って改めて調べてみることにした。そしたら、Aさんが勤める企業のやり方が超合法で、なるほど!と思うような内容だった。
台湾では、一般に解雇となると、以下5つの理由を根拠に可能と言われている:
1. 重大なハラスメントやルール違反:従業員がハラスメントや犯罪を犯した場合
2. 著しい勤務不良:遅刻や無断欠勤を繰り返した場合
3. 能力不足、職務不適任:仕事の能力が不足している場合
4. 病気や事故で働けない場合
5. 業務縮小、廃業などの場合
このうちの#3に関しては、基本的にできないと考えたほうがいい。#4に関しても、法定の休養期間を休んでもらった後の話になるため、本当に起こることは稀だ。
今回Aさんが勤める企業が取ったのは、#5だ。具体的には部門の閉鎖だ。この#5を理由にした解雇が思いのほかハードルが低くて、僕はびっくりした。
部門を閉じるだけで、その部門にいた人を解雇できるなんて僕は知らなかった。もちろん会社側は解雇金を払うし、それなりの待遇は準備する。
また、会社側は一度部門を閉じたら、すぐにその部門を再開するようなことをしてはならないという条件はある。
これが僕の友人が言っていた「台湾では企業はすぐに人を解雇するよ!」の根拠だったのかと思った。
参考までに話すと、Aさんが勤める会社は台湾で上場していて、業績も悪くない。なんなら来年には新しい会社設備もできる。
そんな会社が、将来を見据えてAさんがいる部門を閉鎖し、その部門にいた人を解雇しようというのが今回の話だ。
解雇される側が出来る事、やっちゃいけない事

調べれば調べるほど、Aさんがいる企業がとても理にかなった解雇をしようとしていることがわかり、話題はもはや、どうすれば解雇されないかよりも、Aさんは何ができるか?に変わっていた。
そこでブログの最後に、もしも台湾で解雇されることになったら、何ができるか?ということについて話をしたい。
その前に、まずはやってはいけないことを僕なりの意見として共有したい。
まず、勝手に録音することはお勧めしない。
これは、僕が経営者で、録音されるのが嫌だからとかではなく、弁護士に聞いた話だと、相手の許可を得ずに録音した場合、それは盗聴に当たるわけで、正直、録音した側もあまりいい立場にならないらしい。
あと、盗聴した音声は、実際、法廷などでは証拠としてカウントしにくいという話を聞いた。
なので、もしも録音したいのなら、堂々と「すいませんが、この会話を念のため録音してもいいでしょうか?」と聞いてから録音することをお勧めする。
もしも相手が嫌がったら、なぜ嫌なのかを問うのもいいかもしれない(そこまで強気な姿勢を取れるかは別として)。
次にできることは、自主退職をした場合の条件を引き上げることだ。ただし、これは#5を理由に解雇が絶対に決まっている場合は、思い通りに進みにくい。
どういうことか? 通常、企業が単純に人員を削減したいと思った場合、自主退職でやめてもらうか、解雇するかのどちらかを選択する。
従業員に自主退職をしてもらえれば、部門を存続させつつ部門を縮小できるので、多くの企業幹部は、自主退職を選んでもらうことを希望するケースが多い。
こういう場合は、例えば自主退職をする代わりに有給支給日数を増やすとか、退職金を少し上乗せするような交渉は十分可能だ。なぜなら従業員側が主導権を持って話を進められるためだ。
ただし、今回のように部門ごと無くす場合だと、合理的な理由で解雇が決まっているため、退職金を増やす交渉は正直難しい。
通常、企業は従業員を解雇する場合、次の仕事が見つかるまでの間をサポートするという名目で、1ヶ月ぐらいの有給を付与する。
僕だったら、この期間を+2週間にしてもらうなどの交渉を試みるだろう。
あと、人事からきちんと解雇証明書をもらい、失業保険の申請はお忘れなく。
以上、applemint代表 佐藤から、台湾のリストラのお話でした。
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