先日久しぶりにうちの元社員で今では50万人のフォロワーを抱えるインフルエンサーの子のページを見た。
相変わらず精力的に頑張っていて、なんだか本当に遠い存在になったなーと感心した。
彼女の投稿を見ていると、企業プロモーションや自分の情報商材に関する投稿がピン留めされているのを目にした。
台湾ではPR案件はよくある話だし、別に企業プロモーションをしているから銭ゲバと思うことなんてないし、自分の商品を出しているからお金儲けに固執しているとかは正直思わない。
むしろ、よくこんなにオファーがあるなーとまた感心した。
というか、台湾のインフルエンサーは企業プロモーションを積極的に受けないと恐らくやっていけない。人気である期間は限られてるし、稼げる時に稼がないと将来不安でしょうがないはずだ。
台湾では去年野球のプレミア12で台湾のチームが優勝して以来、イケメンのその当時のキャプテンは企業から引っ張りだこで、そこらじゅうにイメージモデルとして起用されている。
僕だったらもう少しPR案件を吟味するが、野球選手の寿命は長くないし、台湾で野球選手として稼げる金額の天井は見えているから、インフルエンサー同様に今のうちに少しでも多く企業の案件を受けておけ!って感じになったのでだろう。
ただ、インフルエンサーや有名人が企業案件を受け続けたり、自分で情報商材を出すのは長期的に、新しいマネタイズのチャンスを潰す可能性は否定出来ない。
今日は、僕なりに、台湾のインフルエンサーが消耗していく原因について話をしたい。
古典ラジオのアメリカ南北戦争を聞いて思ったこと
僕がこれを書いている今、僕が大好きな古典ラジオでは、リンカーンについて話をしている。
リンカーンの話をする上で避けて通れないのが、アメリカの南北戦争だ。信じられないかもしれないが、今からたった160年ぐらい前に、アメリカでは南北に分かれて本気で戦争をしていた。
結果的に、奴隷制度を支持していたアメリカの南部が設立したCSA (Confederation States of America) が敗れたわけだが、その当時の南部が綿花産業以外ほとんど成長しなかったのが、非常に興味深い。
その当時南部は、奴隷を用いて綿花栽培を行っており、奴隷に対して給与を払ってなかったため、綿花事業の利益率が高く、何か新しく始めようとしても、結局綿花事業に後戻りした。
工業も発達しなかった。工場を建てて奴隷を働かせたら恐らく利益率は高かっただろうが、南部の人たちは奴隷が高度な知識を取得し、北部へ逃げることを恐れた。
その結果、奴隷ありきの商売ばかりし、結局綿花栽培に後戻りし、他の産業の底上げができなかった。
一方の北部は奴隷に頼らない所謂”ビジネス”をした事により、健全な競争が生まれ他の産業が育った。
この歴史的事実を台湾のインフルエンサーに当てはめると、色々面白いことが見えてくる。
割に合わないYouTube やその他メディア

以前インフルエンサーの子と話をした時、彼女はYouTube動画に力を入れたくないと言っていた。
理由は面倒で、費用対効果が悪いからだ。
台湾で YouTube の広告収入だけで生きていくのは恐らく難しい。中国語で動画発信をした場合、視聴者は台湾市場約2,300万人 + 一部の香港人 + 華僑だ。
これだとあまり高い視聴回数を狙えない。
要するに、YouTube 動画を一本作って何万回、何十万回視聴されようが、得られる広告収益は限られていて、全然儲けにならないってことだ。
その一方で企業向けのリール動画はとても儲かる。リール動画の相場はフォロワー数などによってバラバラだが、例えば50万人のフォロワーがいれば、30秒~1分程度の動画に対して 5~10万台湾ドル (25-50万円) でも全く問題ないだろう。
今流行りのインフルエンサーの情報商材も、基本的にレベニューシェアなので、インフルエンサーは肖像権を貸すだけでいい。
一回動画を撮ってしまえば、あとは売れるのを待つだけで利益率はとんでもなくいいだろう。
人や企業は当たり前だが、楽して儲けられる方法や、今成功しているモデルを優先する。
例えば僕らはインターネット広告をしているが、基本在庫を持たない。そんな会社が在庫を持つビジネスを始めるのは、とても勇気がいる。
インフルエンサーも同じで、高い利益率になれると、利益率が低いビジネスをするのがとてつもなく割に合わなく感じると僕は思っている。
種まきの重要性

しかし一方で社会はどうなっているか?世の中はショート動画に溢れ、昨今ショート動画をインフルエンサーに依頼しても、全然コンバージョンに繋がらないケースがほとんどだ。
AI が本格的に普及したら、AI はインフルエンサーが企業からお金をもらって撮っている PR コンテンツなんてすっ飛ばす可能性も高い。
そうするとインフルエンサーのニーズは希薄化する。
また、イーロンマスクは今後AI が普及すれば、一つのアプリで完結するようなスーパーアプリが出ることを予言している。
というか、Xを買収した時から、Xで動画視聴、Xで支払い、Xでコミュニケーションを取れるように考えている。
そうなった場合、例えば X 以外のプラットフォームに影響力を依存しているインフルエンサーは長い視点で見ると、決して安泰ではない。
では何ができるか?よく言われている解決策は、コミュニティ形成だ。要するにファンを作るということだ。インフルエンサーならもうすでにフォロワーがいるからその中にはファンもいて、アドバンテージがある。
しかし、コミュニティ形成に大事なライブ配信や、ファンの人との交流はお金はかかるのに儲けは少ない。あ、ライブ配信の場合投げ銭があるか。
別にインフルエンサーは今よりもリスクを取って利益率が低いビジネスをしろと言っているわけではない。
今やっているとんでもなく利益率が高いビジネスを常識にするのが危ないという話だ。そしてこれはインフルエンサーのみならず、僕らにも同じことが言える(僕らのビジネスは決して利益率は高くないが…😅)
まとめると、台湾のインフルエンサーは広告収入だけではとてもじゃないがやってられないため、企業の PR 案件を積極的に受ける。
企業の PR 案件も面倒でコスパが低いものは避ける。リール動画や投稿が彼らに取っては美味しい。YouTube 動画のプロモーションってなると、動画の途中にさりげなく入れる広告ならまだしも、そうじゃない場合、撮影から編集までかなり面倒だ。
また、SNS 活動は基本的にサクッとできるメディアへの露出や投稿が多くなる(インスタやThreadsなど)。
YouTube 動画の更新なんて一部は面倒でやってられないだろう。
それでビジネスが回るサイクルが出来上がると、アメリカ南北戦争時代の南部のように、それ以外の利益率が低いビジネスへの軌道修正が難しくなる。
今後も台湾におけるインフルエンサーの活動に注目していきたい。
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