【台湾進出黒字への道筋】通販企業の台湾生き残り

【台湾進出黒字への道筋】通販企業の台湾生き残り

こんにちは!台湾でデジタルマーケティングの会社 applemint の代表を務める佐藤(@slamdunk772) です!

2016年からコロナウイルスが拡大した2020年にかけて、実に多くの日系通販会社さんが台湾に進出しました。進出形態は様々で、現地法人を立てた会社もあれば、越境ECという形で台湾に進出した会社もありました。

しかしながらコロナウイルス拡大に伴う日本市場での業績悪化や、台湾人の定期購入の低さ、高い CPA などもあり、その後台湾向けに越境ECで進出する会社は一気に減った印象を受けます。

これは台湾に進出したラーメン屋さんの現象と似ています。台湾では 2013年から2015年ぐらいにかけて、一風堂やラーメン凪などが台湾に進出し、一時的に台湾でラーメンブームが起こりました。それを見た他のラーメン屋が2016-2019年ぐらいにかけて台湾に進出し、またラーメンブームが起こりました。

しかし2022年現在、台湾に進出した多くの日系ラーメン屋は撤退し、残っているのは資本に余裕のある一風堂や一蘭、フランチャイズが絶妙にうまい鳥人(日系ではない)、そして台湾でラーメン屋を個人で立ち上げた複数の店舗です。

要するに、台湾に進出する会社は通販会社であろうと、ラーメン屋であろうと度々ブームが起こり、ブームが去ると撤退する会社がかなりいるという事です。

では台湾で生き残る会社と撤退する会社では何が違うのか?どうすればいいのか?今日は通販企業の台湾生き残りにフォーカスしてお話をしたいと思います。

長文になりますが、台湾で本気で成功をしたいと考えていて、そのためなら何でもする覚悟がある方は絶対に参考になると思っています。逆に成功はしたいけど、自分ではどうにもならないと思っている方はここで読むのを止める事をおすすめします。

台湾進出に関するセミナーを鵜呑みにしてはいけない

上記タイトルを見て、いきなり不愉快な気持ちになっている同業者の方がいる事を覚悟の上でお話をします? 謝ってもあまり意味はないと思いますが、もしも不愉快になられたのであれば、この場でお詫びを申し上げます?

まず、台湾進出のセミナーに参加する方が考えなければいけないのは、台湾進出に関するセミナーを開いているのは”誰か” という事です。恐らく台湾進出を支援する会社さんです。

では、台湾進出を支援する会社さんは、なぜ自社のスタッフの貴重な1時間を度々無償で捧げてセミナーを開くのでしょうか?それは台湾に進出する会社を増やして儲けたいからです。

では、どうすれば台湾に進出する会社は増えるでしょうか?それは “成功事例” を聞くと増えるでしょう。しかし冒頭でもお話ししたように日系通販企業の台湾での成功事例は少なく、むしろ失敗事例が多いでしょう。

でも人々は失敗事例なんて聞いたら逆に台湾に進出したくなくなります。

そこで台湾進出支援会社さんはほんの一握りの成功事例をみなさんに語るわけですが、成功は再現性が低いので、僕はぶっちゃけ台湾進出セミナーの多くは意味がないと思っています。

leo (佐藤峻)

テーマによります。

ここだけのお話し

他のブログで何度もお話をしているように、台湾進出の成功は再現性が低く、僕は台湾で生き残る鍵は失敗を避ける事だと思っています。

台湾に進出した日系通販企業の現状

台湾進出

それでは本題に入りましょう。

通販企業が台湾でうまくいかない理由を知るには、そもそも通販企業はどのように利益を出していて、そのビジネスモデルが台湾ではどうなのか調べる必要があります。以下は僕が調べた、台湾に進出していて上場している通販企業3社の利益率や広告宣伝費です:

通販会社A社
  • 原価率:14%
  • 販管費比率:76%
  • (広告宣伝費は売上の29%)
    営業利益率:8%
通販会社B社
  • 原価率:29%
  • 販管費:55%
  • (広告宣伝費は売上の37%)
    営業利益率:22%
通販会社C社
  • 原価率:36%
  • 販管費比率:57%
  • (広告宣伝費は売上の22%)
    営業利益率:6%

所謂通販会社と言われる企業は日本で広告宣伝費に売上の20%-30%ほどかけていることがわかります。これはかなり高い数字です。例えば Sony の広告費は売上高に対して 4.7%ですし、そのほかの大企業の広告費も売上に対して一桁が多数です。
参考:「広告宣伝費」が多いトップ300社ランキング

また、通販会社の営業利益は大体5-10%ほどなのがわかります。これはつまり、売上に対する広告宣伝費が20-30%を超えると、営業利益を圧迫する事を意味します。

これが台湾ではどうでしょか?次に台湾に進出した日系通販企業さんの売上に対する広告宣伝費や営業利益を調べたいのですが、残念ながら僕はメーカー側に勤めてませんし、勤めていたとしてもこんな敏感な数字は絶対に公開しないでしょう。

そこで、日本の営業利益と広告宣伝費を基に、台湾ではどうすれば儲けが出るのか調べたいと思います。仮に僕の広告予算が月々30万台湾ドルだとします(約120万円)。台湾で日本のように黒字化していれば、以下のような数字になるでしょう:

台湾にいる通販企業の営業利益シミュレーション

売上:100万台湾ドル(30万台湾ドルの30%)
広告宣伝費:30万台湾ドル
原価:15-20万台湾ドル
販管費:40-50万台湾ドル
営業利益:5-10万台湾ドル

仮に、自社の商品単価が1,000台湾ドルだとすると、100万台湾ドルを売り上げるには、1,000個売る必要があります。

つまり 30万台湾ドルの広告宣伝費を使い、1,000個売るという事です。これは単純計算で CPA 300台湾ドルですが、これに LTV なども絡めれば CPA 1200台湾ドルぐらいでコンバージョンが取れれば黒字でしょう。

では実際はどうでしょうか?以下は実際に台湾に進出した日系通販企業の最初の数年を、僕の経験を基にシミュレーションしてみました(数字は適当です)

台湾にいる通販企業の営業利益シミュレーション

売上:100万台湾ドル(30万台湾ドルの30%)
広告宣伝費:80万台湾ドル
原価:15-20万台湾ドル
販管費:60万台湾ドル
営業利益:-55~60万台湾ドル

広告で宣伝費がかさむ理由は、化粧品や健康食品を「定期購入」する習慣がまだ普及していないため、新規顧客を獲得するためです。

また、販管費もかさみます。販管費は、日本で働くスタッフが台湾のオペレーションをすれば台湾の人件費は実質タダと思うかもしれませんが、台湾に進出する通販企業は人件費の他、返品対応費、コールセンターの費用、フルフィルメント費用など何かとかかります。

つまる所、台湾で日系通販企業の営業利益が中々改善しない理由は以下にまとめられると思っています:

台湾に進出した通販企業の営業利益が改善しない理由

1. 定期購入者が日本より少なく、新規顧客獲得のための広告宣伝費が思ったよりかかっている
2. 台湾進出支援会社に対して払う手数料(倉庫やフルフィルメント、返品対応やコールセンターなど)が、思ったよりもかかっている

通販会社にとっての定期購入者と台湾の現状

customer

通販企業は通常無店舗で、「家賃」という固定費がかからない強みがあるものの、広告をしなければ誰も通販サイトを訪れません。

売上に対して 20%の宣伝広告費を投下しても営業利益が出る理由は、原価がものすごく安いか、一度顧客を獲得すればリピーター (定期購入者)がいるからと考えられます。日系通販企業は後者でビジネスが成り立っています。

逆を言えば、リピーター(定期購入者)が存在しない場合は広告宣伝費が重くのしかかり、ビジネスとして成り立たない可能性も示唆します。

残念ながら台湾ではこのシナリオが現実のものとなりつつあります。台湾はリピーターの数が日本に比べ少なく、LTVが低い場合が多いです。また、台湾は人口規模も日本の1/5なので、新規顧客を探すために非購入者に対してデジタル広告をしても、何度も同じ人に広告を表示する現象が起きます。

残念ながら買わない人はいくら自社商品の教育をしても買わない場合が多く、広告の費用対効果は一回りすると悪化の一途をたどります。

台湾で営業利益を上げる方法

台湾利益率改善

最後に、僕だったらどうやってこの現状を改善するかというお話をします。現状を改善する時に大事なのは、自分達のビジネスがどうやって回っているのか改めて因数分解する事です。

因数分解をした上で、どこを改善すれば一番コストがかからなくてインパクトがあるか考えます。

ここまで話してわかっているのは、営業利益を圧迫している要因は主に3つあるという事です:

台湾通販事業苦戦理由
  • 新規顧客獲得にかける広告費が想定以上にかかっている
  • その理由はリピーターが中々増えないため
  • その他、販管費も割とかかっている

………..

「そんなの言われなくてもわかってるよ!(怒)」「みんな定期ユーザーを増やそうと努力してるのに偉そうなことを言ってんじゃねー(怒)」とか通販関係者に怒られそうです(すみません)

大事なのは全部を一気にするのではなく、1つだけ集中的にする事だと僕は考えます。なので僕だったら会社が切羽詰まっていたら、この中で一番コストがかからずに出来て、やった後のインパクトが大きい事を優先的にします。

leo (佐藤峻)

僕だったら「3段ロケット」なんて言って、3つのうちどれを先にして、何を何年かけて改善するのか数値化します。

これでも僕は台湾で起業して5年経ちますし、コロナも生き延びてます。また、台湾で業績が低迷していたカラダファクトリーさんのV字回復にも貢献したので、ここまでご覧になって僕と一緒に台湾で業績を改善したい通販企業さんはコチラからご相談ください。

最後に、台湾で起業後現金が20万元まで減り、死にかけた僕達が台湾でなぜ生き延びているのかご参考までにご覧ください。

超貧乏 applemint のコスト削減

startup in 【台湾進出黒字への道筋】通販企業の台湾生き残り

applemint は僕と台湾人のパートナーエリックが それぞれ25万元出し合って、50万元で始めた会社です。どこからも出資を受けていません。というか無視されました? ただでさえお金がないのに、最初の月に 10万元消えました。

あ、キャバクラや飲みとかで溶かした訳ではありませんよ。会計士への支払いや敷金・礼金のせいです。主な収入源は翻訳業で、実はその当時翻訳の収入がなければ今頃潰れてたと思います。

そんな僕らがどうやってお金をかけずに顧客を獲得して今につながっているかというと、コンテンツです。applemint は創業から今まで5年間で使った広告費は、10万円ぐらいです。

僕は今までに多分300ぐらいブログを書きました。その大半は結果に結びついていませんがいくつかは問い合わせに繋がり今日に至ります。Youtube も始め、台湾のデジタルマーケティング事情を『読む』という選択肢の他に『見る』という選択肢を増やしました。

今思えば創業時にブログと並行して、ブログを活用した SNS をしていればもっと顧客は獲得できたでしょう。コンテンツは結構最強で、良質なコンテンツを作れば Google 広告にも使えますし、自然検索にも引っかかりますし、SNS でも発信できます。

なので僕は台湾に進出する会社に必ずと言っていいほど、3年後の広告宣伝依存から脱却するため、進出初年度からのコンテンツ制作を提案しています。本音を言うと、コンテンツの制作は僕らからすとあまり割に合う仕事ではありません?

僕がコンテンツを提案するのはガチで顧客のためです。僕が楽して金儲けをしたければ、定期継続率やリピーターの数字を適当に都合のいい数字にしてシミュレーションを渡して、通販企業に広告費をじゃぶじゃぶ使わせます。

残念ながらコンテンツ制作は短期的な費用対効果が悪く、不確定要素が多いため実行する通販企業はほとんどいません…(僕の説得力不足もあります…)それでもこのブログを読んで、applemint なら何とかしてくれそうと思ったらご連絡ください。

applemint は顧客の台湾での長期的な発展を望んでいます。

applemintへのご相談やご連絡はこちらから!

Leo Sato 佐藤峻

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