台湾上場企業の分析 『後編』:ASUS の現状

台湾上場企業の分析 『後編』:ASUS の現状

こんにちは、台湾でウェブマーケティングのサービスを提供する applemint 代表の佐藤 (@slamdunk772) です。

先週に引き続き、今週も台湾の代表的な会社の分析を簡単にしたいと思います。前回書いた『台湾上場企業の分析 『前編』:HTC の現状』では、HTC の企業分析を行い、素人なりに意見を出してみました。

今回のブログでは、表題の通り、ASUS についてお話をしたいと思います!前回同様、今回も引き続き僕独自の企業分析方法で ASUS の現状をお伝えします!このブログを読む前に、もしも僕の企業分析方法に興味がある人は以下のブログをご覧ください!

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ASUS の現状:今何やってるの?

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ASUS と言えば、台湾を代表するコンピューターのメーカーです。台湾にお勤めの人だと分かりますが、台湾の企業の ASUS 使用率はとにかく高いです。そんな ASUS は今どんな事業をしているのでしょうか?

まずは以下、ASUS が現在取り扱っている商品及びサービスを 2017年のアニュアルレポートから抽出したのでご覧ください。(2017年のアニュアルレポートが一番最新でした….)

Asus656 1 in 台湾上場企業の分析 『後編』:ASUS の現状

デスクトップからスマートフォン、プロジェクターまでとにかく幅広い商品ラインナップが目につきます。これらに共通するのは全て電子機器関連の商品ということです。つまり ASUS はメーカーです。

ASUS は HTC と同じメーカーなので、儲け方は以下の因数分解で説明できます。

ASUS の儲け方

– (研究・開発コスト) – (仕入れ) – (製造費用) + 売値 = 儲け

次に企業が考えないといけないのは、上記の 「儲け」を如何に最大化するかです。ASUS は HTC 同様メーカーなため、儲けを最大化したい場合に考えられる方法は以下です。

ASUS の利益最大化

1. 研究・開発コストを下げる (R&D コスト削減)
2. 仕入れコストを下げる
3. 人件費・製造費用を下げる (歩留まり UP、製造の効率化)
4. 売値を上げる

そこで、次に #1-4 の各項目の数字を見て、具体的に#1-4 のどの項目に力を入れて儲けを最大化しようとしているか見てみたいと思います!

R&D のコスト

まずは R&D のコストから確認します!以下、R&D のコストをアニュアルレポートから抜粋しました。

asus RD656 in 台湾上場企業の分析 『後編』:ASUS の現状

R&D の費用は 2016年13,298,904NT から 2017年 14,931,072NT (1,000単位) へ 12%UP が確認できました。R&D のコストは下げないようです。

では具体的にどんな商品の開発に力を入れているのでしょうか?2017年に開発した商品と 2018年に開発を予定している商品の比較があったので以下ご覧ください:

ASUS の開発予定商品

ほとんど一緒なのですが、2018年はウェアラブル商品が抜けていました。ウェアラブル商品からは撤退したのかもしれません。ウェアラブル商品はなくなるものの、R&D のコストは下げないので、これは既存商品を更に強化していくものと見られます。

それでは次に仕入れコストの増減を見ていきたいと思います!

仕入れコスト

仕入れコストは、R&D のコストを見たときと同じ表に掲載されています。以下をご覧ください:

asus RD656 in 台湾上場企業の分析 『後編』:ASUS の現状

2016年は “Operating cost (仕入れコスト)” が 400,575,339 だったのに対して、2017年は 374,562,306 と減っています。

ただし、2016年と 2017年の合計金額を単純に比較すると大変なことになります。なぜなら通常売上が上がると仕入れも上がるため、仕入れが前年比で上がったからと言ってコスト削減に取り組んでいないと考えるのは間違いなためです。

そこで、粗利率を見ます。以下2016年と2017年の粗利率です。

ASUS の粗利率
  • 2016年:14%
  • 2017年:13%

2017年は粗利率が悪くなりました。つまり、仕入れやオペレーションのコストを下げて儲けを最大化しようとしているわけではなく、むしろ売上に対するコストは上がっているということです。

次に営業利益率を見て、人員削減の有無やオペレーションの効率化について考えたいと思います。

営業利益率

早速 2016年と2017年の営業利益率を比較します:

ASUS の営業利益率
  • 2016年:4%
  • 2017年:2.9%

2017年は 2016年と比べて営業利益率が悪化しています。ただし、この営業利益には仕入れコストを引いた金額が含まれているので、売上から人件費やマーケティング費用を引いた利益を売上で割って、売上に対する人件費の増減を見たいと思います。その結果は以下です:

ASUS 売上に対する人件費の増減
  • 2016年:92.6%
  • 2017年:92.6%

特に変化はありません。これは、売上の減少に対して人件費及びマーケティング費用が減ったことを指します。2017年は 2016年に比べて売上が減ったことはお伝えしました。

もしも2017年の人件費とマーケティング費用の総額が2016年と同じだった場合、2017年の上記のパーセンテージは上がります。しかし2017年も2016年も92.6% でした。

つまり、ASUS は売上減少に合わせて経営者側がきちんとマーケティング費用や人件費を削減したことを意味します。

ASUS は今後どうやって儲けていくつもりなの?

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アニュアルレポートをちょこっと見た感じ、ASUS は今後商品ラインアップを更に増やすか、既存商品をもっと売って儲けを最大化させようとしているように見えます。つまり利益率を改善するという方向ではなく、もっともっと量を売る戦略だと思います。

飲食業で例えるなら、フランチャイズではなく直営店を増やして売上規模を増やすという戦略です。

例えば、松屋は直営店の割合が吉野家より多く、営業利益率が低いですが、直営店で管理する場合、松屋が直接品質を管理するため、品質が維持できるメリットがあります。

また、直営店だと既存店舗の管理は本社が行うため、統率が楽な場合が多いです。フランチャイズ運営の場合、本社が価格を下げようとすると、大抵フランチャイズ側に反対され運営が難しくなります。

フランチャイズの方の収入が減るためです。その分コストが減り、営業利益が良くなります。どちらもメリット/デメリットがあります。メーカーも売値を上げて少ない量でも利益を出すラグジュアリーブランドを目指すか、大きな量を売って少ない利益率で利益を出す大衆ブランドを目指すのかで戦略が変わってきます。

ASUS は後者を選んだということです。ASUS はそもそも大衆ブランドなので納得です。僕は個人的に量を売って儲けを最大化させる戦略はあまり好きではないですが、ASUS の経営陣からしてみれば「黙れ小僧!」って感じでしょう(苦笑)

好きではない理由は単純に、これだけ物が溢れる時代においてこれ以上大量の商品を売り続けることは良いのか?と思っているからです。売れる/売れないというよりは環境問題も含めてこれ以上もので溢れて良いのか、と思っているだけです。

最後に改めて「企業分析」についてまとめます。

企業分析のやり方がわからないという方は、まずは分析したい企業がどうやって儲けているか考えてみてください。次に、その儲けの構図を因数分解してみてください。

因数分解をした後は、アニュアルレポートで因数分解した各項目を調べてみてください。これだけで、何となく企業が考えていることがわかります。初めから財務諸表を見るのは終わりなきマラソンを走るようなものです。

今回のブログが皆さんの参考になれば幸いです。

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